紫芋汁粉。
皮を剥き、茹でて汁ごと裏ごしした後、砂糖を加えてとろりと煮詰めた甘い喜び。
高貴な京紫を思わせる色彩を放ち、強烈な吸引力を持って異界に誘(いざな)われます。
いざ!と思えど、たじろいでしまいます。
しかし白梅や乙女椿の花に「さあ、お飲みなさい。」と勧められた気がして、勇気を出して一口啜(すす)ってみます。
行きつく先は魔界の都かと思いきや。
その味わいは、すべてを優しく包み込むような手弱女(たおやめ)の白魚の指先を思わせる繊細さ。
かぐわしい紫芋独自の味わいは、彼女が焚く香炉の匂いが漂っているかのよう。
まろやかにとろんとした口あたり。
静かでじんわりと響く甘やかさ。
ああ、このぬくぬくとした温かさにいつまでも浸っていたい。